2011年10月24日月曜日

【文化財保存修復】伎楽面の制作(2011年度)

こんにちは、教員の岡田です。

岡田ゼミでは昨年から、乾漆による伎楽面の制作に挑戦しています。
今年は、2009年にNHKの「阿修羅 天平の謎を追う」で阿修羅像を制作された
愛知県立芸術大学名誉教授の山崎隆之先生にご指導いただき、崑崙と迦楼羅と
波羅門の三つの面つくりに挑戦しました。
ようやく完成し、9月の学科展で展示することができましたので、制作過程を簡単に報告します。

伎楽面とは
法隆寺や東大寺などの大寺院では奈良時代に、法会の際に観客の笑いを誘う、
滑稽なしぐさの演舞がおこなわれました。
このときの演舞でかぶるお面を伎楽面といいます。
現在、正倉院に伝わっている伎楽面には木製と、乾漆製がありますが、伎楽面の
形態上の特徴は、能面などと異なって、頭頂部まですっぽりとかぶってしまう形にあります。

9月の学科展より










 崑崙(こんろん) ▶写真左
崑崙は中国では南方の黒人を指したらしく、他の伎楽面より一回り大きく、
獣耳や牙をもつ異形の風貌に表わされます。鎌倉時代の『教訓抄』という
本によると、崑崙は唐風の美女(呉女)に懸想して、これを追いかけ回した
あげく、力士に懲らしめられて縄で絡めとられる滑稽な役回りだったようです。

迦楼羅(かるら) ▶写真中央
迦楼羅はインドの古代神話に登場する霊鳥でガルーダとも呼ばれ、龍を喰う
とされます。演舞では、「けらはみ」とよばれ、地面の虫をついばむ演技をしたようです。

波羅門(ばらもん) ▶写真右
波羅門とはインドの四姓の最上位を占める階級で、高徳者のことをいいます。
皺の深い上品な老人の顔ですが、演舞では赤ちゃんのオムツを洗う役回りだったようです。



[制作工程]
今年の伎楽面の制作は4月に木組みを作ることから始めました。以下、簡単に工程を説明します。
①木組みを作る。

































②  麻紐布を巻いて、その上にスサを入れた赤土を盛り、大体の形をつくる。

















③ 粘土を盛って顔の細部をつくる。(山崎先生です)















④粘土が乾燥したらその上に離形のために薄紙を貼り、さらにその上に漆とニレ粉を練った木屎で麻布を3回貼る。

















⑤麻布が固化後、漆とニレ粉を練った木屎漆を盛って顔の表情を作る。
















⑥木屎が固化したら、なかの土をすべて取り除く。

















 ⑦土を除去後、もう一度細部の手直しをします。














 ⑧ 細部を表現するため、再度、木屎で成型して完成です。

















 ※おまけ※

















 山崎先生には週に一度大学の講義に来ていただいていましたので、毎週指導を仰ぎ、
先生に面の右半分をつくっていただき、それをもとにして学生が左半分を作るという
繰り返しで、制作を進めました。 
ですが、右と左でだんだんと造形に差が出てしまい、顔がなかなか正面を向かなく
なるので、修正するのに手間取りました。

また、ゼミのみんなは漆を扱うことが初めてでしたので、なかには漆にかぶれた
人も出ました。
それでもみんな、楽しく作業を進め、やっと展示に間に合わせることができました。


「真夜中のJ14実験室」
模造伎楽面


模造伎楽面